青森・白神山地の「目屋マタギ」とは? マタギ文化について白神マタギ舎の小池さんに取材

 

「目屋マタギについて興味がある方」

「白神山地の本当の魅力を知りたい方」にぜひ読んで欲しい!

 

こんにちは!

Aomori & YouのMiyuです。

Aomori &Youというメディアで青森の魅力を発信しながら、青森旅行をお助けする「青森旅コンシェルジュを運営しています。

青森にホテルを作る事を目標に、夏に青森にUターンし日々奮闘しています。

 

今回は、白神山地でガイドとして白神の自然を守る「白神マタギ舎」の小池さん夫婦に「マタギ」について教えていただきました。

 

「マタギ」なんとなく名前は知っていましたが、正直なにをしている人たちなのか知りませんでした。

小池さんからお話を聞いて、白神山地にはこんな素敵な人たちの文化があったんだと感動しました。

今無くなりかけてしまっているマタギの世界。

私の取材だけでは伝えきれないほどの、深くて価値がある文化だと思います。

この記事で、少しでも「青森にこんなすごい文化があったんだ」と思っていただけたら嬉しいです。

 

 

 

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「目屋マタギ」の文化を伝える「白神マタギ舎」とは?

 

青森県の世界自然遺産である白神山地。

広大なブナ林が残る豊かな自然と共に生きてきたのが「マタギ」です。

そのマタギの生活文化とその基盤となる自然を保存・伝承することを目的として、2000年に設立されたのが、「白神マタギ舎」です。

メンバーは、津軽ダムの建設で沈んでしまった砂子瀬出身の「目屋マタギ」の方たちを中心に、今回取材させていただいた小池さんたちなど。

目屋マタギの文化、そして白神山地の自然をよく知ったガイドが、白神山地をガイドしてくれます。

 

白神の山で生きる「マタギ」とは?

 

「マタギ」 名前は知っていて、猟をする人という事以外、正直何を具体的にしている人かは知らない人が多いのではないのでしょうか?

 

大学を卒業し、マタギに弟子入りをした小池さんにマタギについて教えて頂きました。

 

「そこそこ知っている人でも、狩猟だけしている人たちと思われがちだけど、マタギは狩猟・採集生活をしている人。

普通の猟師との違いは、厳しい掟がある。」

 

マタギは、東北・北陸にいて、名前の語源は諸説あるそうです。

 

マタギがシナノキの樹皮を剥いで使い、シナノキが「また」という別名があるからという説や、

先端が二つに割れている二股の杖を使うからという説もあるが、

目屋マタギの仲間である工藤光治さんのお父さんの作太郎さんから聞いたのは、

 

「熊や動物の命を頂くとき、

可愛そうだなと思ってしまうと、ただ傷つけてしまうだけになって動物に長く苦しみを与えてしまう。

命を頂くときは、心を鬼にして一発でしとめる。

そしてまた、鬼になって猟に行く、“また鬼になる“という事で“又鬼” と言われている。」

と教えていただきました。

 

「大きな熊を授かった時のマタギ・工藤茂樹さん」 提供 白神マタギ舎

 

マタギにとっての最大の行事が、「熊撃ち」

 

「年がら年中、熊撃ちをしているわけではない。

ゴールデンウィーク頃から、長くて10日~2週間で熊撃ちのシーズンは終わり。」

 

勝手なイメージでずっと狩猟をしているのかと思っていたのですが、熊を狩りに出ているのは1年でたった2週間なんだそうです。

 

ー何のためにマタギは熊撃ちをするのか?

お肉を食べるので、動物を殺すのはかわいそうと言える立場ではないのですが、どうしてマタギは熊撃ちをするのかを小池さんに伺いました。

 

「昔は、食料のため

あとは、毛皮と熊の胆 (くまのい)と呼ばれる胆嚢

熊の胆は昔は、津軽の殿様に納めていたくらいの最高級の漢方薬。

山奥で、タンパク質をなかなか取れないから、山の中で生きるために熊を撃っていた。」

 

提供 白神マタギ舎

熊撃ちをするのが、4月後半から2週間の間だけなのにも理由があります。

 

「昔から、マタギが山に入っているのは、ちょうど冬眠開けの時期。

価値の高い熊の胆は、消化液を出す場所だから、物を食べ始めると消化のために胆汁が使われて、どんどん小さくなっていく。

冬眠中は、ものを何も食べないから、消化液が使われないから、一番熊の胆が大きい状態。

動き始めるとどんどん小さくなってしまうから、せいぜい冬眠あけ2週間だけしか熊を撃たない。」

 

「あとは、冬眠中は毛が生え変わるから、冬眠開けが一番毛皮がいい。

歩かないから筋肉もやわらかいから、肉もやわらかい。」

 

様々な理由から、冬眠開けせいぜい2週間だけしか熊撃ちはしないそうです。

「この2週間で授からなかったら、今年はこれまでだなと辞める。」

 

熊がとれるまでやるわけではないため、何年も授からない年もあったそうです。

 

ー目屋マタギは、「熊撃ち」の時期以外は、何をしているのか?

提供 白神マタギ舎

1年間でたった春先の2週間しか「熊撃ち」をしない目屋マタギ。

それ以外の時期は、何をして過ごしているのか伺いました。

 

「マタギは、山で生きてきた人たち。

春は山菜取り。

夏は、昔は赤石川・追良瀬川の源流域で大きなマスを採っていた。

1本4キロくらいのサクラマスを一人10本背負って、

内蔵を出して、塩漬けして、冬場の食料にしていた。

秋は、きのこや木の実を取って、冬は、ウサギ狩り。昔は、カモシカやテンなどもいた。」

 

と狩猟だけをしているイメージがあったマタギですが、

季節に合わせて、狩猟だけでなく山からの恵みを頂いているそうです。

 

提供 白神マタギ舎

 

キノコは木に包んで、持って帰るそうです。提供 白神マタギ舎

 

 

 

 

マタギとハンターの違いとは?

 

「マタギ」と「ハンター」

どちらも猟に出て、獲物をとるという点では、同じことをしていると私のようなよく知らない人だと思いますが、

「マタギ」と「ハンター」の違いを小池さんに伺いました。

 

マタギとは、「昔から伝わる厳しい掟を守り、猟をすること」だそうです。

 

マタギの掟とは具体的にどんなものがあるのでしょうか?

 

提供 白神マタギ舎

 

「山ほどある。

口笛を吹いちゃいけない。歌を歌っちゃ行けない。から、

こっちのほうに向かっておしっこをしちゃいけない。

ここの場所は帽子をかぶったらだめ。から、、、、山ほどある。」

 

マタギ最大の行事である「熊撃ち」にも、熊を授かったら、熊を天国に送るための大切な儀式があるといいます。

 

「敬意の一つとして皮を剥いでから、儀式をする。

剥いだ皮を熊に見せて、毛皮をほめてあげる。

“すごいいい毛皮を着てたね。“と。

毛皮を売るから、“この毛皮のおかげで私たちもまた生きていけます。“と感謝をする。

熊肉をその場で解体するんだけど、全て捨てるところがない。

肉になってこだしに収まった状態になっても、

そのこだしをまたいでは行けないし、よっこいしょと振り回して背負ってはいけない。

熊を軽く扱わないという事。

 

 

小池さんやマタギが熊を仕留めることを「授かる」という言葉を使っているのも、動物は神様からの授かりものという意識があるからなんだそうです。

 

「サカサ皮の儀式」 提供 白神マタギ舎

 

 

 

 

 

縄文人のように昔からの山の暮らしをしてきた「目屋マタギ」の現状とは

「山菜採り」 提供 白神マタギ舎

 

山の中でずっと昔から生きてきたマタギ。

私たちの生活が便利になるにつれ、

白神山地と共に生きているマタギが山の中だけでの暮らしは厳しくなっていったといいます。

 

「だんだん、市街(弘前市内)から道が通りやすくなると、沢山の人が来るようになって、山菜は根こそぎとっていくし、魚も釣っていって、どんどん資源が少なくなっていた。

戦後は、現金が必要になってきて、だんだん、マタギだけでは生活できなくなって行った。

仲間たちは、林業をやりながら、合間合間にマタギの生活をしていたが、

1993年に世界遺産になったら、メインの猟場も行けなくなった。」

 

 

目屋ダムの建設で、目屋マタギたちの故郷・砂子瀬は湖底に沈み、、、

山へとのびる林道は多くの人を山へ運び、山の恵みは失われ、、、

1993年の世界遺産登録で目屋マタギのメインの猟場は、立ち入れなくなった。

 

「マタギ小屋」 提供 白神マタギ舎

 

 

青秋林道問題・世界遺産登録までは、ほとんどの人が白神の名も知らず、

無くても不都合が無かった人々が、白神の恵みやそこで生きる人たちの生活を奪っていきました。

 

市街地で生きる私たちにとっては、山への道が通りやすくなって、都合よく山へアクセスできるようになったと同時に、

山の中で生きる人たちにとっては、今まで守ってきた自然を壊していく無知な「破壊者」だったんだと話を聞いて思いました。

 

 

ー現在、マタギは何人いるのか?

今の白神山地が豊かな自然のまま守られてきた理由は、

そこで山を利用しながらも守ってきたマタギの存在のおかげだと思います。

そんなマタギ文化を守り続ける「マタギ」は現在、何人いるのか小池さんに伺いました。

 

 

「砂子瀬で生まれ育った一人だけ。

私は25年ほど前に弟子入りしたが、未だにマタギと名乗っていいものかどうか迷う。

と言います。

 

 

本物のマタギは、全国でも少なくなっていて、目屋マタギの後継者はいないのが現状だと言います。

提供 白神マタギ舎

 

 

ーこれからマタギになりたいという若者はいないのか?

「いないですね。マタギは仕事じゃない。生活全般。

昔はマタギで生活をしてたが、それでも、食べていくのは難しい。

山は待ってくれないから、休みの日だけいくでは大事な時が粗末になってしまう。」

 

 

マタギだけでは、食べていく事が出来ず、他の仕事で稼いでこなければいけないのが現実だと言います。

 

「だから、簡単にやってくれとは言えない。

全く知らない人を、命がけの山に連れていくかと言われたら難しい。」

というのが現実だと小池さんは話します。

 

 

白神マタギ舎 基本情報

「目屋マタギ」について、さらに知りたい方はぜひ白神マタギ舎を一度訪れてみて下さい。

電話番号 0172-85ー2628(8:00~22:00)
お問い合わせ https://matagisha.sakura.ne.jp/otoiawase/postmail.html
Facebook @ShirakamiMatagisha 
公式HP https://matagisha.sakura.ne.jp/index.shtml

 

 

 

 

白神山地で生きる目屋マタギ まとめ

提供 白神マタギ舎

 

いかがでしたでしょうか?

今回は、白神マタギ舎の小池さん夫婦に「目屋マタギ」について教えていただきました。

白神山地に山の中だけで生活し、こんなにも豊かな文化があった事を、

小池さんへの取材を通して初めて知ることができました。

 

人間の都合で、破壊されてきた自然、そして市街に住む私たちのためと言って、

生活を壊された砂子瀬に住む人たち。

正直、こんな事実があった事すら知りませんでした。

もう無くなってしまったものは、取り戻せないですが、今残っているものは守ることができます。

今まで起きてきたような間違った選択は、自分自身でも絶対にしないと改めて考えさせられた取材でした。

 

小池さんへの取材は、1つの記事ではまとめきれなかったので、

次の記事で、白神山地の魅力や小池さんたちの白神との出会いを紹介します!

記事は、【こちら】 白神山地でマタギの文化を守りながらエコツアーのガイドを務める小池夫婦に取材 

 

 

 

 

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