わざわざ訪れなきゃ買えない弘前の革製品の老舗・亀屋革具店の兄弟を取材

「弘前の亀屋革具店について知りたい方」

「長く大事に使いたい革製品を探している方」に是非読んで欲しい!

 

こんにちは!

Aomori & YouのMiyuです。

スイスのホテルスクールを卒業し、京都(Four Seasons Kyoto)・広島(Azumi Setoda)のラグジュアリーホテルで修業し、2024年に青森にホテルを作る事を目標に、2022年9月に青森にUターンしました。

 

Aomori &Youでは、将来の私たちのホテルに泊まっていただくゲストへ紹介したい青森の人のインタビュー、そしてゲストへおすすめしたい青森の魅力を発信しています。Aomori & Youを通して、いつか青森に行ってみたい!改めて、地元・青森の魅力を知れた!と思ってもらえたらと思っています。

 

地元・弘前をもっと好きになって欲しい!という思いで作った弘前ガイドブック「Be a Local in Hirosaki」には、弘前に来たら訪れてほしいお店のエピソードや店主さんの思いを紹介しています。

弘前観光のお供!弘前ガイドブック「Be a Local in Hirosaki」

 

 

 

 

今回は、弘前にある老舗・革具屋さん「亀屋革具店」のお二人にインタビューさせていただきました。

将来、自分のホテルができたらゲストに絶対紹介したい青森の名店です。

 

 

 

弘前の老舗・革具屋さん「亀屋革具店」とは?

土手町を過ぎ、弘前公園へ向かう坂の途中にお店を構える「亀屋革具店」

地元だけでなく、わざわざ県外から亀屋革具店の革製品をめがけて、ここへ訪れる人も多い。

ネット販売はしておらず、弘前の実店舗でしか買えない革製品が店頭に並んでいます。

 

 

亀屋革具店の歴史は古く、馬具屋として大正4年(1915年)に創業しました。

陸軍第八師団が置かれ軍都として栄えた弘前で陸軍が使用する馬の鞍などを作っていたそうだが、街が軍都から学都へと移り変わり、馬具の需要から学生かばんや銀行かばんの需要へと時代と共に変わっていったそうです。

現在も馬具の製法を受け継ぎ、厚い革を手で塗った手作りのかばんや財布などの革製品を販売しています。

 

愛用のかばん

 

私が亀屋革具店に出会ったきっかけは、スイスのホテルスクールに通っていた頃、毎日制服でスーツを着ていたので学校や仕事の面接に使えるかばんが欲しくて母に相談したところ、「丈夫で長く使える亀屋革具店のかばんにしたら?」と勧めてくれた事から。

パソコンや書類も入る大きさのチョコレート色のかばんをオーダーメイドで注文しました。

オーダーしてから約1年半待ち、手元に届いた時の嬉しさを今でも覚えています。一つ一つ手作りで作っているからこそ、すぐ手に入らないあの待っている時間もラグジュアリーな時間でした。

自分の好きな言葉をかばんの内側に入れてもらった自分だけのかばんと一緒に学校生活や大切な面接を乗り越えました。二十歳の頃に買って、6年経ちますが型は崩れず、カッコいいままです。

 

愛犬の名前も入れることができる犬の首輪やリード

 

 

そんな私の大切なかばんを作った職人さんはどんな方なんだろうと思いながらも、いわゆる「昭和の職人さん」を想像して、なかなか制作様子を見せてください!とはなかなか言えずにいたが、、、

今回、勇気を出して取材をさせていただけるか伺うと取材を了承していただけました。

 

恐る恐る作業場に入ると、想像していた職人さんとまったく違う気さくな二人が待っていました。

 

 

 

弘前が誇る革製品を作る職人らしくない気さくな兄弟

 

長い歴史がある亀屋革具店で現在職人として革製品を作っているのが肥後紳一郎(ひご しんいちろう)さん・守胤(もりつぐ)さん兄弟。

創業は肥後さんのひいおじいちゃんで、二代目がおじいちゃん。そして、三代目が兄の紳一郎さん。

 

子供の頃から革製品を扱う職人さんとしてのおじいちゃんを見て育った二人。

最初から亀屋革具店を継ぐ予定だったのか伺うと、、、

「店を継ぐ気もなかったし、興味もなかった。」と意外な答えが返ってきた。

 

肥後さんたちが子供の頃の亀屋革具店は、おじいちゃんの自宅兼作業場だったこともあり、おじいちゃんの家に遊びに来ているという感覚でしかなかったと言います。

 

継ぐ、継がない。の話を家族間で話題にならないほど亀屋革具店の後継者問題とは無縁だったという。

当時を振り返ると、車が好きだった兄の紳一郎さんよりもどちらかというと弟の守胤さんの方が物作りが好きで、革製品には興味があったほうだったと振り返ります。

「革製品の作り方というよりは、おじいちゃんと一緒に働いてたおじさんが勉強や色んなことを教えてくれる存在だった。ねぷたが好きで、自分で描いたねぷたをおじさんが骨組みを作ってくれたり、、、中学・高校生の頃にアメカジブームがあってgoro’s の財布が流行ってた時もおじさんに作り方聞いて、冗談半分で財布を作ったりした事もあった。」

 

 

「全く継ぐつもりはなかった」二人が亀屋革具店を継ぐようになった経緯とは?

 

県外からもわざわざオーダーメイドの注文をしに弘前へ来るお客さんもいるほど根強いファンが多い亀屋革具店のかばん。

そのかばんを作るきっかけとなったのが民芸品ショップからの依頼だった。

東北の手仕事をアピールしたいというお店が亀屋革具店の技術に注目し、新しいデザインのかばん制作を依頼。販売し始めると、テレビ、新聞、雑誌で取り上げられるようになり忙しくなっていったという。

受注量が増え、肥後さんのおじさんが2人だけでは製作が追い付かなくなってきた頃、ちょうど仕事を辞めた兄の紳一郎さんが手伝うことに、、、

 

「最初はちょっとだけ手伝うつもりだった。なのにズルズルとなって、、、そのうちに給料をくれるようになって、そしたら給料も上がっていって、気づいたら保険もかけてくれて、、、(笑)そのまま継ぐことになっていった。」

車が好きで車屋さんで働いていた紳一郎さんがひょんなことから亀屋革具店の3代目としてお店を継ぐことになったそうです。

 

 

 

その頃、大阪で過ごしていた弟の守胤さん。

高校生の頃から古着が好きで、大阪のアメ横を訪れた時に「大阪に行きたい!」と思い、高校卒業後は大阪の専門学校へ。色んな仕事をしながら、バンドやスケートボードなど大阪で楽しく過ごしていた頃、お母さんから電話がかかってくるように、、、

その内容は「車が好きだった兄に亀屋革具店を継がせてしまった。」と。

「帰ってこないか?って言われてた。だけど、母親から呼ばれて戻るのは違うなあと。だけど、ある日母親からの電話で“兄貴が帰ってきてほしいって言ってる”って、それを言われれば、“わかった!へば帰る!”ってもう本当にその一言で決断して、岐阜の出張先で電話を切った後すぐに兄貴に電話かけて “雇ってください、お願いします” って言ったの今でも覚えてる。」

 

それから兄弟2人で亀屋革具店の職人として働く事に。

まさか兄弟で働く事になるとは思ってもいなかったと振り返ります。

 

 

 

 

1年待ちでも手に入れたい亀屋革具店の丈夫で長く使える革製品とは?

 

技術はどうやって学んだのか?という質問に、

「弟は、才能。俺はおじさんたちと5・6年ぐらい一緒に仕事する事ができた。その時に技術を盗んだ。5年目ぐらいで一人で作れるようになった。」と話す兄の紳一郎さん。

 

二人で作業を分けて一つの製品を作っているのかと勝手に想像していたが、

かばんを担当するのは兄の紳一郎さん、財布などの小物類の担当は弟の守胤さん。と完全に分業!

 

「お互いの製品を作れと言われてもできない」と話す二人。

「バイク屋と車屋。すし屋と洋食屋みたいな。同じ乗り物だけど違う、、、同じ食べ物だけど違うみたいな、、、多分、作れるけどへたくそだと思う。逆に弟は綺麗に作れるけど、時間がかかると思う。」

 

作業場の様子 右が兄・紳一郎さんで左が弟・守胤さん

 

 

「お互い興味無くこの世界に入ったのに、モノ作りは好きだからこだわりがある。」

 

毎日、同じ机で向かい合わせに作業をする二人。

兄弟で喧嘩になる事はないのか?と伺うと、

「ずっと一緒に働いて来なかったから良かった。他で何年も働いた経験があったから今一緒に働けている。」という。

1つの製品を完全に一人で最初から最後まで作る。これが兄弟で長く続ける秘訣なのかもしれない。

 

 

 

丈夫さを追求した手縫いの革製品

 

亀屋革具店の二人の作る製品は、すべて一つ一つ手作業で作られている。

亀屋革具店の革製品の特長は、長く使える厚くて丈夫な革。

かばんで使う革は、厚さ約3mm。財布などの小物に使用する革も同じ革を適当な厚さに漉いて使用している。何もかも手作りで、型紙も自分たちで定規を使って作ったもので、革に型を付けて裁断している。その革を手で縫う。

「薄い革だと手縫いに負けちゃう。縫うというより、縛ってる。」

 

流行を捉え、低価格に大量生産するファストファッションとは真逆とも言っても過言では無い亀屋革具店の革製品は、次の世代へ受け継げるほど丈夫で長く使い続けられる。

オーダーメイドのかばんは一年待ちの場合も多い。待ってでも欲しい!と思える理由も納得。

 

 

 

同じ馬具屋からのスタートという事で「東北のエルメス」と評されることもある亀屋革具店。

しかし、東北のエルメスと言われるのは嫌だという二人。

理由を伺うと、

「もちろん、誉め言葉で言ってくれてるけど、うちはあくまでも道具屋で、作っているものが違う。だって、エルメスをガンガン使わないでしょ?うちのかばんは使い込んで欲しい。ほつれた所はなんぼでも直すからたくさん使って欲しい。」

 

いち道具としてハードに使い込んだ時に本領を発揮する亀屋革具店の製品。

長く使えるからこそ革の経年変化も一緒に楽しみたいですね。

 

 

 
 
 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

A post shared by 亀屋革具店 (@kameya1915)

(最近は、色んな色の革を組み合わせたオーダーなど、お客さんから新しいインスピレーションを頂く場合も多いという。)

 

 

 

 

 

最後に「これからの挑戦はなんですか?」という質問に

現状維持、どんな事があっても。コロナがあっても、店が傾いても。上げない代わりに下げもしない。必ず三代目が潰すって言われてる、、、(笑) だから歴史が長い分、潰さない事が大事だと思う。」

 

昔から長く続いているからこそ、続けることが一番大切なんだと話す。

 

 

 

 

亀屋皮具店 基本情報

営業時間

9:00〜17:30

定休日

日曜日、祝日の月曜日

電話番号

0172-32-2077

Instagram @kameya1915
場所

〒036-8201 青森県弘前市一番町24

 

 

 

 

亀屋革具店への取材 まとめ

今回は、私が大学生の頃から愛用している革のかばんを作った「亀屋革具店」のお二人にインタビューをさせていただきました。

どんな職人さんが作っているのかとドキドキしながら始まった取材ですが、とても気さくで話しやすく、いわゆる「THE 職人」のイメージではない素敵ないお二人でした。

「サステナブル」という言葉をよく耳にする時代、と同時に新しいものを毎シーズン買うというファストファッションの時代。この時代に、一つの物を修理をしながらも長く使い続けるのが粋で「サステナブル」なんだと改めて取材を通して感じました。

それが自分の地元である弘前で作られている事が私の自慢であり、今後も多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。ぜひ、一度亀屋革具店に訪れてみて下さい♪

 

Text & Photo Miyu Mikami

 

 

青森の自然の美しさを表現するダンス×津軽三味線ユニット「天仁舞弦」の二人を取材 

わざわざ訪れなきゃ買えない弘前の革製品の老舗・亀屋革具店の兄弟を取材” への2件のフィードバック

  1. こんにちは 
    はじめまして
    私も先月亀屋革具店さんにバッグをオーダーしました。Miyuさんがカバンに入れてもらった好きな言葉って、どんな言葉ですか?
    チャームやD管のオプションはつけてもらいましたが、言葉も入れてもらえるんですね!

    ブランドものは、同じものを持ってる人がたくさんいると思うと、あまり興味が持てなくて。自分だけのカバンは自分の中でとても価値のあるものに変わると思うので、とても素敵だと思います。
    私は生まれて40数年青森市に住んでいますが、この歳になってからこぎん刺しやあおもり藍の魅力にハマり出しました(笑)
    ホテルでの修行をされたとのこと、ホテル作りのMi y uさんの夢も素敵です。どうか叶いますように。
    青森の魅力発信、これからも続けてください。応援してます。

    1. コメントありがとうございます(^^)
      オーダーされたのですね!私は、「Belle âme」という文字を入れましたよ!
      最近、新しくタッセルも買いました♪
      お手入れもして、どんどん自分だけの物になっていくのがうれしいですよね!

      嬉しい応援メッセージもありがとうございます。
      頑張ります!!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です