「津軽塗について知りたい方」「津軽塗の職人さんのお話を聞いてみたい方!」必見!
こんにちは!
スイスのホテルスクールを卒業し、京都(Four Seasons Kyoto)・広島(Azumi Setoda)のラグジュアリーホテルで修業し、2024年に青森にホテルを作る事を目標に、2022年9月に青森にUターンしました。
Aomori &Youでは、将来の私たちのホテルに泊まっていただくゲストへ紹介したい青森の人のインタビュー、そしてゲストへおすすめしたい青森の魅力を発信しています。Aomori & Youを通して、いつか青森に行ってみたい!改めて、地元・青森の魅力を知れた!と思ってもらえたらと思っています。
今回、紹介するのが青森県を代表する伝統工芸品、津軽塗。
津軽で生まれ育った私にとって、津軽塗はいつも身近にあるもので、“絶対に箸は津軽塗じゃないと!“ なんて物心ついた時から私のマイルールになっていました。
東京に上京した時も、津軽塗のMY箸と津軽塗のスマホケースを持って行ったほど。
今回は、津軽塗を制作から販売まで手掛ける 津軽塗たなか(株式会社たなか銘産)に取材させていただきました! 歴65年の津軽塗職人さんに直接お話を聞かせていただいた内容、津軽塗の歴史や種類について紹介します。
「津軽塗って何?」津軽塗の歴史~江戸時代から300年続く伝統~
『津軽塗』は、江戸時代中期に津軽のお殿様が、塗師を召し抱え、弘前場内にも塗師の作業場を設け作られていました。元々は、武士のおしゃれとして、刀の鞘などの武具の飾りとして用いられ、やがて様々な調度品が津軽塗で彩られるようになったそうです。
明治6年には、ウィーン万国博覧会で初めて『津軽塗』の名が使われ、2017年に津軽塗が青森県で初めて『国の重要無形文化財(工芸技術)』に指定されました。
職人たちがひたすら繰り返す研ぎ出し手技は、奥深い美しさを合わせ持つ津軽塗を作り出し、300年の間に津軽の日常に染み込んでいきました。
(引用) 津軽の手仕事プロモーション実行委員会
津軽塗たなかの現役の職人さんに貴重なインタビュー
今回、津軽塗の魅力を探るために訪れたのは、津軽塗の自社製造から販売まで手掛ける津軽塗たなか(株式会社たなか銘産)。
津軽塗たなかの自社工場があるの場所は、元々は津軽塗団地として津軽塗会社が沢山集まっていたそうだが、今では津軽塗たなかを含めて2社しかないそうなんです。
今回、お話しを聞けたのが津軽塗たなかで職人歴65年大ベテラン”大髙繁さん”と津軽塗職人としては新人の”田中ひとみさん”、そして社長の”田中寿紀さん”。
A&U編集部(以下編) : まずはじめに津軽塗職人になろうと思ったきっかけをお聞かせください。
大髙繁さん (以下大髙さん) : 「私は体が少し悪かったから、父から室内でできる仕事を勧められて、中学校終わってすぐの15歳から津軽塗たなかで働き始めた。
それから、ずっと65年ここで働いている! 他に行くところないから!(笑)
最初は、6年くらい住み込みで弟子入りして、今では、一番長くここで働いている!それに一番最初に弘前で伝統工芸士(経済産業大臣認定)として登録された!」
編: どのくらいの期間、修行したのですか?
大髙さん:「 最初は箸とぎから始めて、6年くらいかかった。漆かぶれする人もいるけれど、私はなかった!自分は舐めっても大丈夫!(笑)」
編: 6年間もですか。。。
田中さんは、津軽塗職人になろうと思ったきっかけはなんですか?
田中ひとみさん (以下田中さん): 「最初はパートで働き始めて、約5年ここで働いてます。元々モノづくりと伝統的なモノが好きで、若いころからずっとそんな仕事に就きたかったです。」
大髙さん: 「田中さんは、絵も描くし、ねぷたの絵もも書くし、三味線も弾けるし、なんでもできる!教えればすぐ覚える!」
田中さん: 「津軽塗は、若いころから興味があったけど、どうやって職人になれるのかがわからなかったです。ずっと他の仕事をしても津軽塗職人になるのが諦められず、就職活動をしている時に、偶然にも津軽塗たなかを見つけたんです。」
編: 長年やってると飽きませんか、、、?
大髙さん: 「最初は飽きるよ!!!(笑) だけど、色々やっていくうちに楽しくなってくる!面白くなってくると、もうやめられなくなって来る。」
編: 長くやってる方が飽きそうですけどねえ、、、他の職業に就こうと考えた事ってありますか?
大髙さん: 「ない!!なにを初めても一年生からだから。」
編: 田中さんから見て大髙さんはどう写ってますか?
田中さん: 「やっぱりすごいです!今、伝統工芸に登録されている津軽塗が4種類あって、それをすべて出来る人はそういないんです。」
津軽塗の種類とは?「唐塗・ななこ塗・紋紗塗・錦塗」
津軽塗の種類①: 唐塗
唐塗(からぬり)は斑点模様で複数の色を浮かび上がらせた最も基本的で鮮やかな津軽塗。色の組み合わせも自在なので、たくさんのパターンがあります。
たなか名産
津軽塗の種類②:ななこ塗
七々子塗(ななこぬり)は、菜の華の種”菜種”で小さなな輪紋を浮き上がらせた津軽塗。落着きと艶やかさを併せ持ち、漆の持つ品格を楽しめます。
たなか名産
津軽塗種類③:紋紗塗
紋紗塗(もんしゃぬり)は、光沢のある”漆黒”と、光沢のない”マットブラック”のツートーンで構成される塗。もみ殻の炭粉を使用します。
たなか名産
津軽塗種類④:錦塗
錦塗(にしきぬり)は、七々子の輪紋をベースに複雑な図柄を幾重にも組み合わせた最も難しいとされる塗です。
たなか名産
引用: https://tanaka-meisan.jp/about_tsugaru-nuri/
編: 4種類すべてできるまでどのくらい時間かかりますか?
大髙さん: 「10年以上はかかる!唐塗、七々子だけできる人はたくさんいるけど、4種類全部できる職人はそんなにいない。」
編: 最近ピンク色、エメラルドグリーンなどの津軽塗を見かけますが、津軽塗で出せない色ってあるんですか?
大髙さん: 「今はほとんど出来る!でも真っ白!ってゆうのができない。
漆は樹液だから、いくら真っ白い色と混ぜ合わせると、クリーム色になってしまう。」
社長さん: 「難しいのは、漆の乾く速度や色味は湿度や温度などの自然条件によって変わる。湿度が高ければ早く乾くし、湿度が低ければゆっくり乾く。早く乾かせば暗い色になるし、ゆっくり乾かせば暗くなりにくい。
例えば綺麗なピンク色を出すには、ゆっくり乾かさないとダメで、それが職人技。
漆は空気中の水分と化学反応して硬化していくので、季節や天候など自然の条件と向き合うが漆の面白さでもある。」
編: 津軽塗の魅力って、青森県民でもなかなか伝えるのが難しいのかなと思っていて、、職人さんから津軽塗の一番の魅力とはなんですか?
田中さん: 「私が思う津軽塗の特徴は、おんなじ技法を用いても、おんなじ模様を作ろうとしても、同じものにはならない事。」
大髙さん:「 次の日同じモノを作ろうとしても、乾き方などで変わってくる。それが津軽塗。」
社長さん: 「漆は、生のものだから、その時の温度、湿度で変わってくる。
職人にとっても、全く同じものが毎回できるのは面白くないし。買う方も、一度目に買って、また津軽塗を買おうと思ったときにもまた違うものと出会う楽しみがある。面白いのが、いろんな津軽塗があっても、うちの津軽塗はどれなのか分かる!!その中でも大髙さんが作ったモノがどれかもわかる!!」
編: へえええ!!!それはすごい!!
大髙さん: 「それに、津軽塗は丈夫!何回も塗っている分、塗の厚みが他よりも多い分、とても丈夫!津軽塗は、48工程あるから、その分手間がかかっている。だから、【津軽のバカ塗】と言われているんだよ。」
編: なんで「バカ塗」って言われてるんですか??
大髙さん: 「バカみたいに何回も塗っているから!!手間かけすぎ!(笑)」
編: 津軽の魅力を伝えるのは、正直難しいと思います。見た目のかっこよさもあるとは思うんですが、私は作り方の工程、どれだけ手間がかかっているのかを知って、やっと津軽塗の良さ、面白さが分かると思うんです。
実際に津軽塗を作ってみて、改めて発見した津軽塗の面白さはありますか?
田中さん: 「発見ばっかりです!最初に工程だけ見てても、全然頭に入って来なかったんです。実際にやってみて、こんなに手間がかかってたんだと実感しました。」
社長さん: 「実際に職人が全部の工程を経験して、こんなに手間がかかるんだと実感した事をどうやって伝えるかが今後の津軽塗の課題ですね。」
編: 青森の若者が青森で就職を考えるとき、ほとんどの人が安定した職業、公務員、銀行とかしか、思い浮かばないと思うんです。だけど、青森でしかない伝統工芸に関わっている人はカッコいい!と,今回取材して思いました!
これから津軽塗職人としてどのような事をやっていきたいですか?
田中さん: 「私が目指す職人像は大髙さんのような何でもできる職人です。
現在、津軽塗を買いに来る人は、津軽塗に興味がある人だけなので、そうじゃない人にも魅力を分かってもらって、興味をもってもらいたいです。あとは、人がマネしない物を作っていきたいです。」
社長さん: 「面白いのが、65年やっている職人が一番クリエイティブな事。
年配の人ほど発想が自由で、“失敗してもまた直したらいいべ。“っていう感覚がある。入ってすぐの人ほど、基本に忠実で、ちょっと固くなってしまっている。長年やっている職人は、なんでもやってみろ!精神がある。長年やっている職人の方が頭が固くなっていきそうなのに、一番頭がやわらかいのが大髙さん。」
大髙さんは、使う道具も全部自分で作ってしまうそうで、以前は、捕まえたねずみのひげをためておいて筆も作ったなんて仰天エピソードも!
【津軽塗の課題】「津軽塗たなか」の社長が思うこれからの津軽塗
最後に社長の田中さんにこれからの津軽塗について伺いました。
社長さん:「全国に色々なの漆器があって、ぞれぞれの産地があって時間をかけて完成されてきた文化であるから、尊重する意味でも、うちはうち。津軽塗がずば抜けてすごいとかではなく、津軽塗の独特の良さを知ってもらったらなと思う。そして、若い世代の人たちにこれからは津軽塗の魅力を伝えれたらなと思う。」
300年続く、津軽の伝統工芸。
津軽出身の私にとって、無くなってほしくない、未来にも続いていてほしい伝統が津軽塗。
ですが、実際は津軽塗がどんな風に作られて、誰がこの伝統を守っているのか、全然知りませんでした。
今回印象に残った言葉が、田中社長が言っていた、『型破りと型なしは違う』という言葉。多種多様な模様を生み出せる津軽塗、それには無限の可能性があるが、それを作り上げているのは今まで津軽塗を守ってきた職人さんがあるからである。
津軽塗たなかの基本情報
今回、取材を受けて頂いた津軽塗たなかは、グラスに津軽塗の独特な模様を生み出す「仕掛」という津軽塗の工程を施した“さわるツガルヌリ“など独自の津軽塗商品を販売している。
ぜひ、弘前に遊びに来たときは、ショップに立ち寄ってみて下さい。
津軽塗たなか 土手町店 (工芸ショップTANAKA)
営業時間 | 13:00~18:00 |
定休日 | 水曜日 |
@tsugarunuri_tanak | |
公式ホームページ | https://tanaka-meisan.jp/ |
場所 |
〒036-8182 青森県弘前市土手町 24−10 1F
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津軽塗たなかの職人さんへのインタビュー まとめ
いかがでしたでしょうか?
青森の伝統工芸品の津軽塗の魅力は伝わったでしょうか?
今回は、津軽塗のたなかの職人さんに直接お話を聞く事ができ、どれほど手間がかかって津軽塗が作られているのかなど見ただけでは知ることができなかった津軽塗の魅力を知ることができました!
ぜひ、青森に来た際には、魅力が伝わりにくいからこそ、知れば知るほど面白い“津軽塗”を探求してみてはいかがでしょうか?!
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